Chapter 2 — The Birth of “Eat Yourself” Collection

第二話:"Eat Yourself" コレクションの誕生

2008年に自分のブランドを立ち上げたとき、

私はまだ “本当に自分だけの表現” を見つけられずにいました。



周りに流されず、誰とも似ないものを作るには、
世界に一人しかいない “私自身” をそのまま表現するしかない。

そう思ったところから、私の方向性は少しずつ形になっていきました。

私の中にある執着、衝動、本能、そして少し皮肉の視線をもつユーモア。

それらをそのまま表現すれば、誰にも真似のできないスタイルが生まれると感じたのです。

私という人間を表す象徴的な性格のひとつが “食べることへの強い欲”。

そこから私を動物に投影し、食いしん坊な動物を表現するというアイディアが生まれました。

こうして “極限までお腹の空いた動物が、食べる物がなくて
自分自身に誘惑されてしまう” 

というコンセプトが生まれ、2012年に完成したのが
やがて “Eat Yourself” コレクションとなる
最初の作品、キツネのリングです。

(なぜキツネなのか? その理由は、また今度改めてお話しします。)

”Eat Yourself" コレクションの最初の作品となったフォックスリング。生命力に溢れた狐を表現。

極限までお腹の空いた動物が自分を食べてしまおうとする悲劇。

その瞬間を美しく、また、少し残酷なテーマであるからこそ、

ユーモアを持って表現するのが”Eat yourself” コレクションです。

この詩的で、ほんの少しダークで、少しシニカルさを含んだ世界。

私が子どものころ、日本でよく観ていたアメリカのカートゥーン─

理不尽な状況なのに可笑しくて、ちょっと残酷なあの世界観に深く惹かれていたことが根っこにあります。

そしてワックスで原型の彫刻を始めたとき、
自分の彫刻する動物たちに
日本の “漫画的な表現” が出ていることに気づきました。

平面の漫画で育った私だからこそのタッチが、立体作品にそのまま現れていたのです。

その “少し漫画的な表現” は当初コンプレックスでもありました。

けれど日本から離れたフランスで活動している今では、

「これは日本人の私にしか出せない表現だ」と自覚できる強みだと思えるようになりました。

時間のなかで、Eat Yourself は私の世界を支える “土台” となりました。

今ではこのコンセプトに縛られず、全く別の物語を持った動物たちも表現していますが、

どの作品を作る時でも、私は動物の感情を表現することを大切にしています。

エネルギーに満ちた感情こそが、私の作品を生き生きとさせてくれるからです。

本能がのぞく一瞬の動き、弱さ、可笑しさ、さりげないシニカルさ。

その瞬間を捉えるために、私は今日もパリのアトリエで動物たちを彫りつづけています。

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”Eat Yourself"コレクションの猫リング。シルバー925に金メッキ仕上げで、動き出しそうな猫の表現。

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